古民家探しをしていると、「どこまで妥協するか」という話と常に向き合うことになります。
ひとつとして同じものがなく、100点と0点が混在する建物が多いため、あれこれ比べては悩む日々の連続であり、そんな中で頼りにしていたのが、「絶対に外せない基準」をいくつか持っておくこと。
今回は、自分が当時どんな視点で物件を見ていたか、その判断軸をまとめてみます。
自分が古民家に求めた6つの条件
1. 石場建てであること
一番重視していたのはここ。石場建てかどうか。
現代的な基礎が入っていた時点で、どれだけ立派だったとしてもだめ。これはもう理屈ではなく単純な感覚の話。
私の中で古民家=石場建ての図式が出来上がっていたため探すときに非常に苦労しました。ネット上で写真を見たとき、写真の1枚目には外観の写真が来ると思います。そしてその外観の写真にはいわゆる縁側と呼ばれるものが載っています。ただし、縁側の下は石場建てのように見えることがあって実際に現地に見に行ってみたら布基礎だったと言うことも多々ありました。
逆に石場建てでない古民家を妥協できるなら、選択肢としてはかなり広がると思います
私の場合、古民家の魅力はやはり構造そのものにあると思っていたし、その中でも石場建ては“古民家らしさの象徴”だったので、中途半端な改修が入っているくらいなら、むしろ手つかずの方がいいという感じ。
それに、「ただ住む」だけじゃなくて、古民家を残していくこと自体に使命感みたいなものも感じていたので、本物の古民家(=石場建て)であることには強くこだわっていました。
ここが妥協できるなら本当に選択肢は広がりますが、私から言わせると結局それは古民家風になってしまいます。
この辺は個々の価値観になってくるため正解はありません。
2. 広い土地がついていること
これは完全に感覚なんだけど、広い庭で子どもたちが走り回ってる風景が自然とイメージにありまして。
家の中だけじゃなくて、外とのつながりも含めて暮らしを考えると、やっぱり土地の広さって大事。これは駐車場が広いとか、庭で畑をしたいとかそういうことではないんです。
- 単純に広い庭で周囲を気にせず遊べること
- そこに交じって親も一緒に童心に帰って遊べること
- 遊んだ道具や作りかけのものをそのまま放置して家に入れること
この辺の情景が私の中にはあったため、広い土地も必須条件でした。
前の記事でも書いたけど、ネットで探すときには「敷地300〜400㎡以上」ってフィルターをかけて、そこから探していました。
結果的にそれが効率的な方法にもなっていたと思う。
何度も書いていますが、まあ大体古民家には広い土地がついているので問題はないです。逆に広すぎる問題があるくらい。
3. 田舎すぎない場所にあること
古民家って、山奥だったり、集落の奥の奥だったり、基本的に不便な場所にある。
割とよくある勘違いに、古民家暮らし=田舎暮らしと思っている方が一定数おります。ただし、その2つは両立させる必要はありません。
私だって現在は古民家求めて割と田舎に来ましたが、めちゃめちゃ便利な場所に古民家があればうれしいですよ。
でもそれは無理なんですね。5億くらい持っていない限りは。
自分の場合も「田舎暮らしがしたい」わけじゃなくて、「古民家で暮らしたい」だった。
そのため、子育てや買い物など、日常の暮らしが現実的に成り立たなさそうな場所は、自然と候補から外れていきました。
実際便利な場所にある古民家って、本当に残ってない。というのも、そういう場所って、大手の不動産会社が早いうちに買い取って、分譲地にしちゃうから。古民家は、そういう人たちにとっては“邪魔な建物”。さっさと壊されて終わりってパターンも多い。だから現存してる古民家は、ある程度「田舎」に偏るのは仕方ない。後は、悲しいことに戦争で焼けちゃってたりとかね。
現実問題、子育て世帯に限界集落はきつい
自分自身、かなり田舎の出身なんですが──
たとえばクラス替えがないような小規模校で、進学=下宿が当たり前、という地域で育ちました。昔はまだ“古き良き”とされるような人との関わりもあって、隣の家に勝手に上がり込んだり、先生の家に届け物を持って行ったり、そういう空気が残っていた気がします。
でも、そういう「昔ながらの関係性」って、年々確実に減ってきている。いわゆる限界集落的なエリアでは、高齢化が進みすぎて、そもそも“関係性”そのものが薄れつつあるようにも感じています。
もちろん、そういう地域が好きで、本気でやりたい人なら成立する暮らしだと思います。でも、たとえば子育て世代だったり、ある程度インフラや人とのバランスを求める人にとっては、やっぱり現実的に厳しい。
それに、「将来的にどうするか」という出口戦略の面でも、田舎すぎる古民家って難しいところがあります。もし子どもに継がせないとしたら売却や賃貸も視野に入るけれど、そもそもその立地ではニーズがほとんどない。結果として、自分の代で負動産化するリスクは高くなると思ったので、私はそういった物件は最初から選択肢から外していました。
なので、古民家をさがしている人は注意したほうがいいと思います。YouTubeは参考にしてはいけません。
あれはあくまでエンタメとして考えるべきで、YouTubeで動画に残すことで古民家再生の諸々を経費化して成り立たせていると思っています。だからいわゆる普通の暮らしをしたい人が、限界集落や田舎過ぎる場所の古民家を買ってはいけません。約束です。
4. 太い梁や大黒柱があること
これは完全に“雰囲気”。だけど、自分にとってはかなり重要。石場建てと同じくらい重要。
どれだけ外観がリフォームされてても、中に立派な梁や柱がないとテンションが上がらない。
逆に、外から見た感じが地味でも、中にどっしりした構造があるだけで「うわ、これは…」ってなる。
骨格がちゃんとしてるかどうかって、それだけで全然見え方が違ってくる。
外観のリフォームについて記載しましたが、実際のところはリフォームをしてるかしてないかは全く気になりませんでした。結局のところ、古民家のリフォーム内容と言ったら、上からベニヤ板をかぶせて、天井にシャンデリアを吊ってというような決まりのパターンがあり見栄えを重視していることが多いです。私はそれに全く引かれないですし、そのようなリフォームはあくまで見栄えだけきれいにしているので建物全体で見たらマイナスだと思っています。
リフォームした結果風通しが悪くなったりとか、そのリフォームのために新しい配管をしたけどその結果どの配管がどこにつながってるかわからんとかね。
重要なのはリフォームの有無ではなく、メンテナンスの有無であり、どれだけ風通しをしたか、どれだけ雨漏りに素早く対処したか、どれだけシロアリに気を遣っていたか、その辺が重要になってきます。
話はそれましたが、太い梁や大黒柱は、石場建てだったらたいていはついてます。
ただそれが、本当に生きているのかは購入前に調べましょう。
見た目は立派でも中はシロアリにやられてスカスカというパターンもあるので。
5. 周辺環境に生活のリアリティがあること
3と少し重なるけど、「自分ひとりで暮らす家」じゃない。家族が暮らしていく家だからこそ、周辺環境は大事。
これは3番にも言えることですが、夫婦揃って古民家好きという幸せなパターンだったらいいですが、私たちのように片方だけが古民家好きの場合、生活の利便性というものは、パートナーの同意を得る上で重要な要素になってきます。
そしてこれも既に述べている通り、周辺施設が便利な古民家はほぼないと言っていいでしょう。正確には「安くて周辺施設が便利な古民家」です。
だからこそ、建物の古民家としての素晴らしさとその古民家が住んでいる土地としての素晴らしさ利便性、その辺のバランスをうまく折り合いつけながら見つけていく必要があります。
徒歩や車で通える距離に学校があるかどうか。病院、スーパー、郵便局、ショッピングモール、コンビニ。
この辺の施設は人それぞれですが、私の場合は學校やスーパーです。
あとは地域の空気とか、人の感じとか、そういうのも含めて「ちゃんと生活できるかどうか」
古民家とは関係ないけど、リアルな暮らしには欠かせない条件のため、これも大事な要素の一つです。
6. 現実的に再生できる状態かどうか
お金が無尽蔵にあれば気にする必要は無いけど、実際のところは住宅ローンを組んで購入する人がほとんどだと思います。だからこれは当然といえば当然なんだけど。
特に屋根。屋根がダメになってる物件って、雨漏りで梁や柱がスカスカになってる可能性があるし、修繕費もバカにならない。
古民家にとって雨や湿気は天敵。とはいえ、素人が一人で判断できることには限界がある。だから、古民家に詳しい人と一緒に見に行くっていうのは、かなり大事だったと思います。
古民家再生協会の人だったり、古民家に強い不動産会社や建築会社、古民家鑑定士の人なんかも。あと、結局は数をこなすしかない。たくさん見て、自分の目を養っていくしかない。
リノベーションがほぼ終わった今だからわかることですが、やっぱりお金の面を考えると、購入前に重点的に見なければいけない部分が屋根というのは概ね間違ってないと思います。
床には無垢材、暖房器具は薪ストーブ、広い土間、ガルバリウムではなく瓦屋根。
このようにそれぞれ理想的な古民家像があると思います。
繰り返しになりますが、無尽蔵にお金があればいいんです。億単位のお金持ちはこの部分は気にしないのです。
ですが大多数の住宅ローンを組んで古民家を購入する人にとっては、上記のような理想を詰め込んでいくと必ず予算オーバーになると思います。
そうなったときにどこが削って行きやすいか、生活に直結する上で削っても問題ないかとした場合
- 薪ストーブ
- エアコンやすとーぶで代用可能
- 床の無垢材
- リビングだけ限定して子供部屋や水回りはほかのものにする
このような妥協案があります。
ただ、屋根の瓦だけは難しい。
部分的に瓦というのはなかなかしにくいですし何よりダサいと思う。
そういった意味でも最初から屋根が丈夫なところを選ぶというのは、費用を抑える意味でもかなり重要な要素だったと思います。実際屋根をやり直すと高いです。私は以前1000万くらいかかると言われたこともあります。屋根だけで。
ちょっといいなと思っていた古民家だったので、「ふーん、まあこれだけの規模でしたらそれくらいいっちゃいますよねー(そんなん誰も買わんだろ!)」みたいな経験もあります。
幸い私の選んだ古民家は、数年前に新しくされていたため非常にラッキーでした。
判断基準を持っておくということ
古民家探しって、思っている以上に“感覚”で動く場面が多いです。
どこかで「ピンときた」っていう直感に頼ることもあるし、逆に「なんか違うかも」と思って候補から外すこともあるでしょう。
でも、自分の中に判断基準があるかどうかで、選び方の軸が全然違ってきます。
ブレずに比較ができるし、物件を見たときにどこに注目するかもはっきりしてくる。
最終的には「ここにしよう」と思える自信にもつながる。
もちろん、どんな物件も完璧ではないから、何を優先して何を諦めるかの線引きは必要になるなめ、自分が大切にしたいポイントを事前に決めておくことは、物件探しをするうえで必要になります。